法律相談の中で比較的件数が多いもののひとつに、借金の相談があります。そのほとんどは、多数の業者から借り入れをしている多重債務の相談です。
借入の理由で最も多いのは「生活費不足を補うため」というものです。その原因は失業や病気もありますが、最も多いのは、給料や年金だけでは生活していけず、次の給料日や年金支給日までのつなぎという軽い気持ちで借りて、徐々に債務が膨れ上がるというケースです。借金と言うと、「ギャンブルにはまって」とか「飲み代がかさんで」ということをイメージされる方が多いですが、実際にそういう方から相談を受けることはほとんどありません。圧倒的に多いのが、普通に日常生活を送っている中で、何かのきっかけでお金を借り、それがいつの間にか返せないほど膨らんでしまったというケースです。
理由はともあれ、借金が膨らんで毎月の支払いが苦しくなったときの対処法には、大きくわけて3つあります。
一つ目は「任意整理」という方法です。これは一言でいうと「支払いを続ける」という方法です。具体的には、債権者との間で交渉して、支払回数を増やすなど支払計画を見直してもらったり(いわゆるリスケジュール)、利息や損害金、場合によっては元本の一部カットをお願いしたりして、基本的には借金を支払い続けていく方法です。
二つ目は「自己破産」という方法です。これは「手元にある分だけ払う」という方法です。具体的には、裁判所に破産を申し立て、債務が払えないということを認定してもらい(破産手続開始決定)、債務者の下に残っている財産があれば分配し(配当)、払いきれなかった分は免除してもらう(免責)という手続きです。
三つ目は「民事再生」という方法です。これは任意整理と自己破産の中間のような方法です。具体的には、裁判所に民事再生を申し立て、債務が払えなくなるおそれがあるということを認定しもらい(再生手続開始決定)、一定の期間(最長10年)裁判所で決められた額を債権者に払った後(再生計画)、残りを免除してもらう(免責)という手続きです。
それぞれの方法にメリット・デメリットがありますし、ケースによって向き不向きがあります。ケースによってはそもそも選択できない手続もあります。どの手続を選択するべきかは、相談される方の意向を基本に、個別の事情を窺ったうえで決定します。途中で方針変更することもよくありますし、最初は方針を確定しない債務整理を開始することも少なくありません。
各手続の詳細は改めて述べますが、ここではどの手続にも共通する「受任通知(介入通知)」について説明しておきます。
弁護士が依頼者から債務整理(任意整理、自己破産、民事再生)の依頼を受けた場合、弁護士は依頼者に代わって、各債権者に対し「自分が債務者の依頼を受けて債務整理をはじめること」を通知します。これを「受任通知」といいます。債権者と債務者との間に弁護士が割って入ることから「介入通知」とも呼ばれています。この通知を行うと、ほとんどのケースで督促は止まります。そのうえで、債権者から債権の状況を届け出もらい、債権者数、債権総額を把握したうえで、具体的な債務整理の手続に進んでいきます。