■Q&A不動産の豆知識(定期建物賃貸借契約の事前説明書面の電子化)-弁護士伊藤

 

Q 定期建物賃貸借契約では、契約書とは別に事前説明書面の作成が必要になるということですが、実際に書類を交付しなければならないのでしょうか。

A 2022年(令和4年)5月18日施行の法改正で、電子メールなどの方法により交付すればよいことになりました。

 

【解説】

1 借地借家法の改正

 定期建物賃貸借契約の事前説明書面については、2017年2月23日のブログで解説しました。
https://hibiya-law.jp/posts/post2.html
 この時は、書面の交付が必要とされていたのですが、その後、デジタル社会形成整備法(令和3年法律第37号)により借地借家法等が改正され、書面の交付に代えて電磁的な方法により提供することが認められるようになりましたので、今回は、その解説をします。
 定期建物賃貸借契約について定めた借地借家法第38条には、以下のような規定があります(原文の漢数字を算用数字に変換しています)。この第4項が、今回の改正で新たに追加されています。

 

借地借家法第38条

第3項 第1項の規定による建物の賃貸借をしようとするときは、建物の賃貸人は、あらかじめ、建物の賃借人に対し、同項の規定による建物の賃貸借は契約の更新がなく、期間の満了により当該建物の賃貸借は終了することについて、その旨を記載した書面を交付して説明しなければならない。

第4項 建物の賃貸人は、前項の規定による書面の交付に代えて、政令で定めるところにより、建物の賃借人の承諾を得て、当該書面に記載すべき事項を電磁的方法(電子情報処理組織を使用する方法その他の情報通信の技術を利用する方法であって法務省令で定めるものをいう。)により提供することができる。この場合において、当該建物の賃貸人は、当該書面を交付したものとみなす。

 

2 電磁的な方法による提供のやり方

 まず、賃貸人は、賃借人に対して、利用する電磁的方法の種類・内容を示すことが必要になります。
 これには、以下のような方法があります。


① 電子メール等を送信する方法
② クラウド等にアップロードしたファイルをダウンロードさせる方法
③ 情報を記録した媒体(USBメモリ、DVD、CD-ROM等)を交付する方法


 賃貸人は、上記①~③のいずれかの方法を選択し、ファイルの記録の方式(PDFなど)とともに賃借人に示します。
 これに対して、賃借人が書面または電磁的方法(メール等)で承諾をすると、賃貸人は、事前説明書面の交付に代えて、上記①~③の方法でデータファイルを提供すればよくなります。
 借地借家法第38条の規定の仕方としては、あくまでも事前説明書面を紙で交付することが原則的な形態で(第3項)、電磁的方法による提供は例外的な形態となっているので(第4項)、賃借人が紙媒体での書面の交付を求めた場合には、賃貸人は紙媒体で書面を交付しなければならないので、注意が必要です。
 また、この改正法は、2022年(令和4年)5月18日から施行されていますので、それ以前に締結された契約には適用されません。
なお、借地借家法第38条第2項で、定期建物賃貸借契約書も電子契約書で作成することができるようになり、事前説明書面の交付・説明から契約締結までをオンラインでできるようになりました。これにより遠隔地の当事者間の契約などで便利になると思われます。


2022年12月22日|HC通信(ブログ):弁護士 伊 藤 敬 史