Q 私は、今より労働条件がいい会社に転職したいと考えております。退職届を提出する際に、会社から、「退職後3年は同業他社に就職できないよ。」と言われました。本当でしょうか?
A 憲法上、職業選択の自由・営業の自由が保障されていますので、特約書等の契約上の明示的根拠ないかぎり、労働者は、退職後の競業避止義務は負いません。会社に根拠をきちんと確認しましょう。
Q 仮に誓約書に署名してしまっていた場合でも、効力が否定されることがありますか?
A あります。
署名したからといって常にそれが有効とされるわけではありません。
署名させられた具体的状況によっては、労働者の自由意思に基づいて作成されたものではないとして、効力が否定される可能性があります。
また、過去の裁判例を見てみると、誓約書があったとしても、下記①~④のような内容を総合考慮し、企業の正当な利益保護のために必要かつ合理的な範囲でしか有効とは認められていません。
①競業行為を禁止する目的・必要性
営業上の秘密やノウハウ、顧客の確保、従業員の確保などが考えられますが、一般的な営業手法や人脈のノウハウは正当な目的と言えないとした裁判例があります。
②退職前の労働者の地位・業務
競業避止義務を負うのは、競業によって使用者の正当な利益を害する可能性がある地位、業務についていた者に限られます。具体的に業務の中でどのような情報に触れる立場だったのかということが重要です。
③競業が禁止される業務の範囲、期間、地域
競業避止義務の対象とされる業務は、使用者の保有している特有の技術や営業の情報等を用いることによって実施される業務に限られます。競業禁止の期間については、一概には言えませんが、2年程度であれば比較的短期であると評価している裁判例が多くみられます。競業を禁止する目的との関係で、競業を禁止する地域を必要な範囲に限定しているのかということも考慮されます。
④代償措置の有無
本来、労働者には職業選択の自由があるのに制限するのですから、相応の対価が支払われるべきでしょう。ただし、①~④を総合考慮しているので、代償措置がなくても有効としている例もあります。
さいごに
いったん退職後の競業を禁止する誓約書や合意書に署名してしまうと、就職したい会社に就職できないとか、誓約書に反して就職した場合に退職した会社から損害賠償請求をされるなど後で大変な思いをすることがあります。署名を求められたとしても、安易にその場で署名せず、一度持ち帰ってよく考えるべきです。
会社は、事前に労働者に必要性を説明して理解を得てから、必要最低限の制約を課す誓約書への署名してもらうよう努めるべきでしょう。