■亡くなられた後に行う必要がある公的手続について(その2)

1 はじめに
 前回は亡くなられた後に行う主な公的手続のうち、特に早急な対応が必要となる、期限が原則として亡くなられた日から14日以内となっている手続についてご説明いたしました。
 この他にも、行う必要のある公的手続は数多くあります。今回は期限が原則として亡くなられた日から1年以内となっている手続をご紹介いたします。

2 期限が原則として3ヶ月以内となっている手続
 相続人は原則として、被相続人が亡くなられた事実を知った時から3ヶ月以内に家庭裁判所で相続の放棄や限定承認の手続を採る必要があります(民法第915条、同法第921条2号参照)。期限に気をつける必要がある一方、相続の放棄や承認について一度意思表示をすると一部の例外を除き撤回することができない(民法第919条1項)ため、この点にも注意が必要です。3ヶ月はあっという間に経ってしまいますので、被相続人に債務がありそうな場合には、早めに弁護士にご相談なさるとよいでしょう。
 なお、判例上、「相続人が被相続人に相続財産が全く存在しないと信ずるにつき相当の理由があると認められる場合」には3ヶ月を過ぎても相続放棄が認められる余地があります。例えば、被相続人には資産も負債もないと信じていたのに、亡くなってから3ヶ月経過後に突然債権者から請求が来たような場合には、相続放棄や限定承認をできる可能性もありますので、弁護士にご相談なさるとよいと思います。

3 期限が4ヶ月以内となっている手続
 亡くなった方が所得税の確定申告をする必要のある方(自営業者等が対象。国税庁ホームページ等参照)であった場合、相続人が1月1日から死亡日までの所得金額及び税額を計算し、死亡の事実を知った日の翌日から4ヶ月以内に申告することが求められます(所得税法第124条、同法125条)。亡くなった方が消費税の課税事業者であった場合消費税・地方消費税の計算・申告も、相続人が行う必要があります(消費税法第45条2項、同条3項)。違反すると、所得税法の場合第238条以下、消費税法の場合第64条以下に規定される罰則の対象となります。
   
4 期限が10ヶ月以内となっている手続
 相続税の申告・納税は、死亡の事実を知った日の翌日から10ヶ月以内に行うものとされています(相続税法第27条1項)。これに違反すると、同法第68条以下に規定される罰則の対象となります。
 相続税の申告までの間に、相続人は税額計算の基礎となる資料の調査・収集等を行うことになります。具体的には、①遺言(公正証書遺言等)の有無や②遺産の調査・評価(どこにどのような不動産を所有していたか、どの金融機関にどのような口座を保有していたかなど)といった手続が一般的ですが、遺産分割協議書の作成といった手続も必要となる場合があります。①遺言の有無に関しては、公正証書遺言の有無を各地の公証役場において検索することができます。ただし亡くなった方が生前に遺言を作成されていない場合も多いです。また、遺産が多くその所在が一か所にまとまっていない場合(複数の金融機関に複数の口座をお持ちの場合など)や相続人が多数いる場合調査そのものに時間がかかることも多く、この段階で弁護士や税理士等の専門家に相談される方もいらっしゃいます。

5 期限が1年以内となっている手続
 亡くなられた方が生前に遺言等で法定相続分通りではない遺産分割方法を定めている場合もあります。この場合でも、遺留分権利者(民法第1042条)は、遺留分侵害者に対し金銭請求(遺留分侵害額の請求)をすることができます(同法第1046条)。ただし、この権利は死亡の事実及び遺留分を侵害する贈与又は遺贈があったことを知った時から1年以内に行使しなければ、時効によって消滅します(同法第1048条)。判例では「遺留分を侵害する贈与又は遺贈があったことを知った時」とは「被相続人の財産のほとんど全部が贈与されていて遺留分権利者がこの事実を認識しているという場合」(最二小判昭和57年11月12日民集36巻11号2193頁)が当てはまるとされており、こうした場合にはその事実を知った時から1年で権利が消滅してしまうため注意が必要です。

6 まとめ
 人が亡くなられた後の手続として、前回と今回を合わせ、原則1年以内に行う必要があるとされるものを紹介いたしました。人が亡くなられた後行うべき公的手続はご紹介した以外のものもあります。期限とともに、人が亡くなられた後どのような手続を採る必要があるのか、可能な限り事前にご確認いただくのが安心と考えます。

以 上


(岩田 朋子)

2021年05月28日