■Q&A不動産の豆知識(賃貸借契約の更新における保証人対応)-弁護士伊藤

Q 私は,2018年9月から2年間の契約期間で所有建物をAさんに賃貸しており,Aさんの父親Bさんにその保証人になってもらっています。この契約では,「建物賃貸借契約書」という表題の契約書の中に保証に関する条項も入れて,AさんとBさんの双方に署名・押印をしてもらいましたが,保証の極度額の定めはありません。2020年9月に賃貸借契約を更新するにあたり,Aさんとの間で更新契約書を作成しようと思っていますが,更新後の賃貸借に保証人の責任を存続させるためには,Bさんとの間でも更新契約書を取り交わす必要があるでしょうか?

A 2020年4月1日から施行される改正民法のもとでは極度額(責任の上限額)の設定のない保証契約は無効とされることから,一般論としては,同年9月の賃貸借契約更新時には,保証契約につき極度額を定める条項を入れて,Bさんとの間でも更新契約書を取り交わしておくのが無難です。具体的なケースにおける判断は,契約の解釈によりますので,弁護士にご相談いただくとよいでしょう。

【解説】

1 賃貸借の更新と保証人の責任

 判例上,賃貸借の保証人の責任は,特段のない限り,更新後の賃貸借にも及ぶとされています(※1)。

 したがって,賃貸借契約の更新の際に保証人が更新契約書に署名・押印していなかったとしても,賃貸借契約が更新された以上,原則として保証人の責任は更新後の賃貸借に及ぶことになります。実務上も,賃貸借契約の更新の際,賃借人との間で更新契約書を作成しても,保証人との間では更新契約書を取り交わさないという例は,これまで比較的よく見受けられたように思います。

2 改正民法~極度額の定めがなければ保証契約は無効

 もっとも,2020年4月1日から施行される改正民法のもとでは,賃貸借契約における賃借人の債務の保証は極度額を定めなければ無効とされており(465条の2第2項),極度額の定めは書面によることとされています(同条第3項)。
 極度額というのは,保証人の責任の上限額のことです。極度額は,元本だけでなく,利息,違約金,損害賠償など,保証人が負うことになる一切の責任についての上限を画定するために,具体的に定められる必要があります(同条第1項)。
 したがって,2020年4月1日以降に契約される賃貸借契約における賃借人の債務の保証では,契約書において,極度額を明示しておく必要があります。

3 契約更新における対応

 では,本件のように,改正民法施行前に賃貸借契約・連帯保証契約が締結されて,改正民法施行後に契約が更新される場合も,改正民法の適用を受けるのでしょうか。
 この点,当事者の合意により賃貸借契約や保証契約が合意更新される場合には,賃貸借も保証も改正民法の適用を受ける(=極度額の定めが必要)ことになります。
 これに対して,保証契約につき合意更新の手続をとらない場合には,当初の保証契約がどのような趣旨だったのかという解釈の問題になると思われます。例えば,当初の保証契約において,改正民法施行後に賃貸借契約が更新された場合にも,当初の保証契約の効力がそのまま存続するという趣旨が盛り込まれていれば,保証契約については改正民法の適用を受けない(=極度額の定めは不要)になると思われます(※2)。
 ただ,この点は契約の解釈の問題となりますので,それぞれの具体的なケースにおいて,改正民法に対応していない(=極度額の定めがない)ことによって更新後の保証契約が無効になるリスクがあるかどうかについては,弁護士にご相談いただくとよいでしょう。
 一般論としては,契約の更新にあたって,改正民法により極度額の定めのない保証契約が無効とされるリスクはあり得るので,そのようなリスクを避けるためには,Aさんとの間で更新契約書を交わす際に,Bさんとの間でも極度額を具体的に定めた更新契約書を取り交わすのが無難と思われます。

(伊藤 敬史)

※1 最高裁判例平成9年11月13日・判例時報1633号81頁。
※2 法務省ウェブサイト(経過措置の説明)
http://www.moj.go.jp/content/001293856.pdf

2020年03月27日